はじめてのあの日

2年3ヶ月

きみといた

大人になった俺

大人のきみ

その2年3ヶ月のはじまりは

本庄のあの店

BMWのE60で迎えに行った

俺のはじめてのBMW

シルバーのボディ

ノンスモークガラス

ベージュの皮シート

サンルーフ

20インチの黒のホイール

あの頃のきみは女として好きだった

人としても好きだった

それがいつからか変わった

本庄の居酒屋でおいしいものを

たくさん食べた

お金なんて気にせず

食べたいものを頼んだんだ

お酒もたくさん二人で飲んで

最高だった記憶

そのあとは

はじめての夜

自然だった

きみはたしか

次の日ボードに行く予定で

朝が早かったっけ

それからデートを重ねて

キスをしようとしたときにきみは言った

できないって

あいまいなこの関係じゃできないって

そこで俺はきみにちゃんと伝えたんだ

付き合おうって

今でも覚えてる

足利の織姫公園

帰りの車の中

俺の左手を握るきみの右手

それから月日が経ち

いつ

どこから

歯車が狂ったのかな

俺も

はじめてだったんだ

ちゃんと結婚とか意識して付き合うの

ちゃんと結婚とか意識して働くの

だから

はじめての状況で

わからないことや

かたよった考えになっていったんだ

俺はきみとの先を考えていた

目先よりも長い先を

でもきみは

目先の俺の態度や言動を疑った

この先のだれのために頑張ってるの?って

からしたら愚問だった

決まってんだろ?って

そうやって

いつからかずれていったんだ

おやすみを言われて

はーいと言ったら

おやすみと言わされたりとか

そういう小さなずれだったんだと思う

きみの感覚

俺の感覚

きみは間違っていなかったし

俺も間違っている気がしなかった

ただ

お互いをわかろうとする気持ちが

きっとお互い足りなかったんだ

最後はきみが限界を感じたことがきっかけ

必死に説得したけど

もう俺がきみの気持ちを動かすことは

できなかった

きみの前ではじめて

涙を流した

けいちゃんも泣くんだねって

ずっと前からきみは泣いていたけど

そんな当たり前のことも

きみの前の俺は

してこなかったんだ

それから

俺は前を見て生きていくことを決めた

それからまた

はじめてあの日が来た

瑠美との始まりが

あったかい体温とともに