はじめてのあの日
2年3ヶ月
きみといた
大人になった俺
大人のきみ
*
その2年3ヶ月のはじまりは
本庄のあの店
BMWのE60で迎えに行った
俺のはじめてのBMW
シルバーのボディ
ノンスモークガラス
ベージュの皮シート
サンルーフ
20インチの黒のホイール
*
あの頃のきみは女として好きだった
人としても好きだった
それがいつからか変わった
*
本庄の居酒屋でおいしいものを
たくさん食べた
お金なんて気にせず
食べたいものを頼んだんだ
お酒もたくさん二人で飲んで
最高だった記憶
*
そのあとは
はじめての夜
自然だった
きみはたしか
次の日ボードに行く予定で
朝が早かったっけ
*
それからデートを重ねて
キスをしようとしたときにきみは言った
できないって
あいまいなこの関係じゃできないって
そこで俺はきみにちゃんと伝えたんだ
付き合おうって
*
今でも覚えてる
足利の織姫公園
帰りの車の中
俺の左手を握るきみの右手
*
それから月日が経ち
いつ
どこから
歯車が狂ったのかな
俺も
はじめてだったんだ
ちゃんと結婚とか意識して付き合うの
ちゃんと結婚とか意識して働くの
だから
はじめての状況で
わからないことや
かたよった考えになっていったんだ
*
俺はきみとの先を考えていた
目先よりも長い先を
でもきみは
目先の俺の態度や言動を疑った
この先のだれのために頑張ってるの?って
俺からしたら愚問だった
決まってんだろ?って
*
そうやって
いつからかずれていったんだ
おやすみを言われて
はーいと言ったら
おやすみと言わされたりとか
そういう小さなずれだったんだと思う
きみの感覚
俺の感覚
きみは間違っていなかったし
俺も間違っている気がしなかった
ただ
お互いをわかろうとする気持ちが
きっとお互い足りなかったんだ
*
最後はきみが限界を感じたことがきっかけ
必死に説得したけど
もう俺がきみの気持ちを動かすことは
できなかった
きみの前ではじめて
涙を流した
けいちゃんも泣くんだねって
ずっと前からきみは泣いていたけど
そんな当たり前のことも
きみの前の俺は
してこなかったんだ
*
それから
俺は前を見て生きていくことを決めた
それからまた
はじめてあの日が来た
瑠美との始まりが
あったかい体温とともに
*